3. 風を切って

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3. 風を切って

 力強い二人の翼が、大空を翔る。  エメの速さに合わせて飛ぶために、今まで経験したロワの飛行よりは随分と遅い。それでもあんなに小さかったエメが今では立派に自分の翼で飛んでいるのを近くで見ると、やはり感動してしまう。エメは飛ぶのが得意なようで、終始笑顔で、恐れも疲れも見せずに竜の国の王都からトカゲの国までを飛びきった。  そこで一泊をして、次の日も、エメはやる気満々に翼を広げる。プリーエルは兄のそんな姿に喜んで上機嫌だ。長い飛行時間の間中、俺にしがみつくしかできずに退屈だろうに文句の一つも言わない。エメも昔歌っていた歌を口ずさむから、プリーエルと俺、エメ、それにロワも加わって、家族で大合唱をしながら鳥の国へ向かった。途中ですれ違った、竜よりは小さいがそれでも十分に巨大な鳥たちが、いい日和ですねと笑っていた。  眼下を過ぎていく山々、森、川、小さな町。川辺に降りて水分補給をした後は、エメはロワの背中に乗った。まだまだ幼い翼には休憩が不可欠。それと比べると、ロワの翼は立派でたくましい。エメの何倍もの速さで飛んだロワは、日が暮れる前に鳥の国へと到着した。     
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