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蓮奈の足が止まったのは夜の頃だった。
「うわわぁぁぁ……」
目の前に立ちはだかる王都の巨大な壁に思わず鳥肌が立つほどだった。蓮奈の住んでいた街には到底無いものだ。
「た、高い壁だね……ビーナ」
《はい!それはもう脳内ワールド一の国ですからね!防壁も見事なモノです》
気づけばすっかり夜になってしまっている事に、蓮奈は宿屋を探すことにしたが、
「ビーナ、ここの世界のお金って…」
一瞬ドキッとした。そういえば財布は持っていた記憶がなかった。
ビーナは思い出したように苦笑いした。
「……初期の金額は所持していないということね」
《あ、はい。すいません。ボクったらご主人様にご迷惑を…》
「ううん、いいのよ。どこかで稼げないかしら、でも、元々の宿屋の金額を知らないと…」
顎に手を当て考える蓮奈に恐る恐るビーナが話した。
《……あのー、今日は寝れないかも知れませんが…クエストをやるのはどうでしょうか?》
「クエスト?」
指定された用件を果たすと報酬としてお金や道具、運が良ければレアなアイテムが獲得できる、ゲームではよくある事だ。
《そ、それに。魔法の使い方にも慣れないとですし……》ピョコピョコと跳ねながら焦りをみせるビーナに蓮奈は仕方がないと思い、ビーナの案内についていくことにした。
たどり着いたのは“ギルド”だった。
《ここのオーナーに話してクエストを受けましょう!》
ニコニコとしているが、やっぱりまだ焦っている様子は変わらない。
(まぁ、しょうがないか……)
ギルドの中は思ったより明るく、夜だというのに人ばっかり、見てみると男の集団ばかり、酔っぱらっている連中もいれば、真剣に打合せしている連中まで。
蓮奈のようなか弱そうな子がいないのは明白であった。
「…………なんだか、大人の場所っぽくないかしら?」
《ん?ご主人様は十分大人なのでは?》
「わ、私は高校生よ!まだ16よ」
そんないがみ合いをしていると、徐々に視線を集められている。
(っう、見られている。やっぱり子供が来る場所では……)
すると、一人の男が近づいてきた。
「なぁお嬢さん、一人フリーか?」
(!?ま、まさか、い、嫌な予感が)
オロオロと強ばった顔を丸出しにしながら少しずつ後ろに下がろうとした。
(に、逃げた方がいいことも、?)
だがそのとき、
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