3人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「私は、現実の世界で死んでしまったの?」
「……ん?そうだね、じゃないとここには来られないもの」
戸惑う蓮奈に構わず、ノアは容赦なく口を開く。
脳内ワールドは死人が訪れる幻の世界。蓮奈はノアもそうなのではと思い込んだ。そして、ノアに尋ねた。
「ノアくん、は。ここのこと詳しい?」
戸惑いで満ちた目をノアに向けている。蓮奈の状況を理解していない様子がよく伝わるほどに。ノアはその時頷いた。
「脳内ワールドから出た人は見たことがない。蓮奈は帰りたい?」
ノアの鋭い目が蓮奈に向かって冷たく響くような感じだった。一瞬でも気を抜けば、心臓が破裂しそうな圧力があった。
「わ、私は、帰りたい。私はまだ、向こうでやることがあるから……」
「それはここででも、十分できるよ」
ノアの言葉に蓮奈は反応した。
「蓮奈はパティシエになりたいんでしょ?」
蓮奈の顔色がまた変わった。さっきもそうだったけど、自分の情報を彼に言った覚えは何もない。ましてや、滅多に話さない夢のことまでも彼は知っていた。
「どうして、そんなに、貴方は、一体何者なの?」
「……………ただの、子供だよ。」
ノアの一言には重みがかかってなかった、先程感じた圧力は何も感じられない。本当に不思議な子といえるだろう。
その時、思い出しかのようにノアはもう一度手を叩いた。
「そうだ!蓮奈にここの“システム”を教えてあげなきゃね!」
「システム?」
まただった。
またニコッと笑った顔が蓮奈の目に焼き付くように離れなかった。
最初のコメントを投稿しよう!