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ただ一人取り残された蓮奈は、とりあえず移動しようとノアの歩いた方向へ足を進めた。
その時だった。ッパリ、という音がバスケットから聞こえた。
「っあ、これ、孵化するのかな…」
蓮奈はとにかくしゃがんでタマゴを眺めていた。横に揺れ動くタマゴに蓮奈は少しだけドキドキしていた。そして、ついにーー。
パリーンという音と光に包まれた。蓮奈は微かに目を開いていた。
《…………………ふぁぁ~》
光が止むと、そこには小さな生き物が佇んでいた。
「こ、これは………」
二足歩行に、長くモサモサした尻尾。ほのぼのとした雰囲気に蓮奈は目を見開いて見つめていた。
《…………うん?》
「あ、は、初めまして……あの、あなたは?」
目の前にいる見たこともない生物に蓮奈の言葉は消えていく、が、あの生き物は確かにノアが言っていたビーストナビだろう。
《ボクはビーストナビです。貴方の事をこの世界でサポートするのがオシゴトです!》
がたごとのような言葉使いもとても可愛らしく、蓮奈はすぐに笑顔をみせた。
(本当に、人間の都市伝説が影響してるんだ………)
するとナビはふわぁーと浮いた。
《ボクに名前をつけてはくれないのですか?ご主人様……?》
「な、名前!?」
名前をつける。本当にゲームの始まりのような感じに、蓮奈は腕を組み、唸りながら考える。
(これ、ゲームが始まる時の初めてあった人に名前を聞かれているみたいな感じだね……)
本当にゲームの世界にいるようで少しだけ嬉しそうに笑う蓮奈にナビはキョトンとしていた。
「そうね、名前は………何でもいいの?」
《もちろん、ボクはご主人様のナビですから!》
笑顔で答えるナビに蓮奈ははたまた唸る。
「……じゃあ、ビーストナビだから“ビーナっていうのは?」
沈黙になった。あまりのネーミングセンスに蓮奈も恥じらいを感じた。だが、
《ビーナ、ですね。分かりましたご主人様!これからよろしくデス!》
嬉しそうに飛び回るビーナを見て、蓮奈の気が楽になったように肩の力が抜けた。
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