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傘を取った男は自分を見つめる先住の客たちにひとなつこい笑顔を向け。
「どうもごめんしますよ」
と板の間の縁に腰をかけた。
男が腰をかけた板の間の奥で、輪を作っていた3人の男の客が、一斉に顔をあげた。
若く小山のような体型の男と、丸顔のはしっこそうな男が手前に座っている、その奥にはやや年上に見える鷲鼻の男がいた。
彼らの前には肴や徳利が多数置かれている、中々羽振りがいいようだった。
大柄な男の膝から先は、板の間に収まりきらず、外に出ている。
店の小女が、入って来た男の脇に、茶を置いたときだ。
もう一人客が入って来た。今入った男の後を歩いていた小柄な影だ。
傘を取った顔に客の幾人かが注目した。
そして、ひそひそとささやく。
……あんまか?雨の中を出歩くとは珍しい。
新たに入って来た男、というより少年は総髪を後ろに束ね、杖を持っている。年齢は随分と若い、十五をすぎたかどうかに見えた。まだ幼さの残る顔のまぶたは固く閉じられている。
あんまは、杖を大きく振って店の中を歩き始めた。
その杖の先が板の間からはみ出していた、大柄な男の足に当たった。
「いてぇっ」
大男の叫び声にあんまは、しおれるようにして身を縮める。
「す、すいません」
「何だてめぇ」
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