船宿で

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 車座の中にいた小柄で丸顔の男の方がすばやく、身を乗り出してきたのを、先に入っていた男が制した。  「まぁまぁあんまり怒りなさんな。狭い中で気が滅入るよ」  男は若いあんまを見て言ったあと、大柄な男の方に向き直る。  「どうだい、足にぶつけたおわびに、ただであんましてもらったら?」  声をかけられた大柄な男は困ったように、奥に座る鷲鼻の男を伺う。  鷲鼻の男は杯を口にやりながら、うなずいた。  「この雨で、気もふさいだからな、いいんじゃないか、やってもらえ」  「そうですか、じゃぁ、そこに横になりなよ。あんまさんもいいね」  あんまはうなずく。  奥で呑んでいる鷲鼻の男の目は、右と左の目の玉の動きがバラバラになっていて、揃っていないような印象を覚える。他にもこういう目を持つ物はいるが、鷲鼻の男はかなり顕著に見えた。  寝転がった若い男の背中はさらに広く。板の間に溢れるようだった。  「こりゃぁいい体をしていなさる」  感嘆して言うと、丸顔の男がふんと笑う。  「体はな。ごろぞうはでけぇばっかでてんででくの坊だけどな」  すると寝ている大柄な男から空気が漏れるような声が聞こえた。  「俺、ぼうじゃねえよ、もう18だぁ」  大柄な男はごろぞうと言うらしい。鷲鼻と丸顔はふふんと笑った。  「確かにぼうじゃねえなぁ」     
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