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「ああ、確かに最近のかんざしはやたらひらひらしてるな」
肩を揉みながら、良郎の手に目を止めた銀二はにやりと笑う。
「………旦那もすみにおけねえじゃねえですか。その手の傷、かんざしでこさえたもんでしょう」
へへと、銀二は、良郎の指のまたにある小さな傷を指差した。気をつけなければ、傷とは気がつかない、ほんの小さなものだ。
「………随分と目がいいな」
指差された指のみずかきをわずかに広げる動作をしたが、男の目はやはり指の傷を捉えているように動かない。
「自分の商品でできた傷はわかりやすよ。そういう傷をこさえるのは、色男かぬすっとかに決まってる」
「………俺らがぬすっとに見えるか?」
良郎の目線は相変わらず、銀二を捕らえてはいない。が、銀二は、野生動物に全身を舐められるような気配を感じていた。
佐吉は、もっとはっきりと剣呑な視線を銀二に向けていた。
「………いえ、お三人さんが、随分と羽振りがよさそうなもんだったんで、そういえば、今朝噂になってたもんで、油問屋に入った賊はどうやら三人組だったらしいって、一人とても怪力の男がいるようだとも……」
銀二の言葉は、袂をぐいと掴んで引き寄せた佐吉に遮られた。
「なんでそんなことを知りたがる?目明しか?」
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