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銀二は、冷や汗の浮いた顔を左右に振った。
「違う」
「本当か?」
「ぬすっとに向かってぬすっとですかなんて言う目あかしはいねえよ………そうじゃねぇ」
ぐびりとつばを飲み込んだあと、冷や汗を浮かせながら、銀二は続けた。
「……金に困ってるんだ。一口乗りてぇ、本職はかんざしだが、簡単な錠前ならできんことはねえんだぜ、若いし力もある」
言い終えた銀二は、ふへへとふぬけた笑い声を出したが、そのにやけた顔は一瞬のうちに蒼白になった。
喉の奥からせり上がるうめき声を、必死で押さえつける。
「ぬすっとじゃねえんだよ、オレたちは」
銀二の耳元を舐めるかのように近づけられた良郎の唇が、低い囁き声を発していた。その下、良郎の手には小刀が握られ、その刃の先は、銀二の太ももに埋まっている。
「押し込みさ、なんせ俺らは人数がすくねえからな、片端から殺してかねえと、あぶねえんだ」
その時。
「ふわぁぁぁぁあぁああ」
しんそこ気持ちよさげな声がした。ごろぞうだった。あんまがごろぞうに話しかけている。
「お客さん、最近大きな仕事をしたんですね」
「たいへんだった」
「そうでしょうとも」
良郎は、銀二の横にぴたりと顔を寄せたまま、斜め後ろにいる佐吉に合図をした。
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