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夕食はあれよあれよと言う間に話をしていた人たちの奥さんや娘さんたちが料理や酒を持ち込み、気がついたらそこで宴会状態になっていた。
これはこのままここで夕食でいいのか?と思って松岡をそっと見ると、これも織込み済みのことなのか、松岡も普通に食事している。田舎の習慣ってこういうものなのか?
「ほら富和さん、飲んで飲んで」
グラスにビールが注がれ、勢い余ってあふれそうになってあわてて口をつける。そのまま一気に干してしまうと、相手はにかっと笑いかけてきた。
「お、富和さんはイケる口かい?」
「あ、ええ普通ですけど。今ちょっと喉乾いてて」
こっちについて松岡と顔を合わせて以来、緊張していてろくに水分も取っていなかったのだ。
「おお、そりゃいいや。飲みな飲みな。おい、ビールもう1本くれ」
「富和さん、こっちも食べてみな、うちの野菜はうまいから」
あちこちから勧められ、田舎の家庭料理は意外とおいしく酒が進む。
「にしても、そんな若いのに一人でこんな田舎に移住ってなあ」
「都会の生活に疲れちゃったのかね」
んなわけあるか、東京生まれの東京育ちだっつーの。
「富和さん、彼女はいないんか? ここは若い女はいないから、誰か連れてきたほうがいいぞ」
「そうだなあ。そんなカッコいいんだからすぐ見つかるよなあ」
ゲイのおれにそんな無茶を。
「仕事がないから若いもんはみんな出てっちゃうんだよなあ。富和さん、一緒に誰か連れてきなって」
そりゃそうだろ、ここに残ってもしょうがないよな。
「俺らは若い人は大歓迎だけど、すぐ帰ったりしないでくれよ」
もう移住は取りやめたのにそんなことを言われても。
でもそれを言うことはできなくて、あいまいに首を振った。
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