第1章  過去の男

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「心配しなくていいよ。灯里とは別れないから」 「は?」 「結婚くらいで変わらないって言ってんの」 「どういうことだよ」 「結婚するけど、俺が好きなのは灯里だよ。このまま続けていこうな」  なんだそれ。 「おれは愛人ってことかよ」  大友は吹き出した。 「愛人って…! 面白いこと言うなあ。でもまあ、立場としては愛人か? 正妻はさすがに無理だもんなあ」  のんきな言いように呆れて思考も止まりがちだ。  いつの間に彼女なんか作ってたんだ? しかも結婚?  能天気にも結婚しても愛人として続けようなんて言い出す男に、何を言ってやったらいいのかわからなくなる。 「つーか、嫁になる女の立場はどうなんだよ。ていうか、そもそもあんた、女もイケたの?」 「まあ目をつぶればなんとか。嫁は嫁で一部上場企業のエリートと結婚したいみたいだから、べつに俺じゃなくてもいいみたいだけど、顔がかわいいし浮気に目くじら立てるほど馬鹿じゃないし、いいかなと思って」  エリートって自分で言うなよ。  しかも浮気っておれのことかよ?  ムッとするが相手はしゃあしゃあとした態度で、灯里の気持ちなどまったく理解していない。  
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