朱の記憶 《R18》

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「……つ、ばき……」  進藤が私へと手を伸ばす。 「……椿、ごめん。……ごめんな」  伸ばされた手は、頬に触れる前に、下へ落ちていった。 「……なん、で……?」  両手で覆った口から、言葉がこぼれ落ちた。  こぼれ落ちた声は、手は、唇は、身体中全てが震えていた。 「なんでっ、なんでよ……っ」  どうして起きていたのに逃げないの。どうして自分から殺されようとするの。 「なんで……っ!」  どうして。  どうして。  どうして、涙が出るの。  頬を涙が伝っていた。  次から次へと溢れ出てくる涙が、自分の裸の胸を、進藤の胸をも濡らしていく。  破瓜(はか)の時も棒で打たれた時も、客にどんなに乱暴にされようと、どんなに優しくされようと、決して泣かなかった。  泣けなかったのに。 「どうして……」  こんな男、死んで当然のはずだ。  こんな男、殺されて当然のはずだ。  ずっと殺したいと思っていた。  ずっと憎くて仕方なかった。  それなのに。それなのに、どうして私はこんな気持ちになっているの。
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