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私は昔からもしも話が好きだった。
もしも私が男の子だったら。金髪碧眼の外国人だったら。隣の屋敷で飼われているお利口な犬だったら。
女学校でも家でも花嫁修行。
そればかりの日々の中、私じゃない私のことを考えるのはとても楽しかった。頭の中の私は、空だって飛べたし、どんなに強い男の人だって投げ飛ばすことが出来た。
もしもを考えれば心が自然と踊り、悲しいことも辛い時も乗り切れた。眠る前に考えれば、たまにその夢を見ることだって出来た。
だから、いつも考えていた。もしもを頭の中でいっぱいに膨らませた。
どんなことよりも楽しかったそれは、今はもう楽しくなくなってしまった。
それでも、私はもしもを考えずにはいられない。
もしも、私が美しかったら。
もしも、私が彼女だったら。
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