朱の記憶 《R18》

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「……椿」  開かれた目が、私へと向けられた。  深い漆黒が私を射抜く。  それは、薬になど犯されていない、力のこもった瞳だった。  あの薬は効かなかったのか。一晩は起きないと言っていたのに。 ……ああ。やっぱり、喜助になんて頼むんじゃなかった。どうにかしてでも、自分でちゃんと用意するべきだった。  ぎり、と奥歯を噛み締める。 「……いつから起きてたの」  取り繕う必要はもうなかった。  つっけんどんに聞いた私に、進藤は何も答えない。  ただ私を見つめたまま、私の手を今度は反対の手でも覆う。 「え……? なに……」  進藤の両手が私の手を覆ったまま、下方へと力を込めた。  ぐっと力を加えられ、突き立てた刃が進藤の胸へと沈む。 「え……。あ……、や……っ! やめ……」  咄嗟に手を離そうとしたが、進藤の手に抑え込まれそれは叶わなかった。あまりの力の強さに、振り解くことが出来なかった。  柄を握ったままの手に、指に、刃が肉へとめり込む感覚が伝わる。 「……っ」  進藤の顔が苦痛に歪む。  呻き、咳き込む。  進藤の手は震え始め、力が抜け、そして、私の手は解放された。
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