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「……ねぇ、進藤様」
進藤の頬へと指を滑らせた。
進藤の頬はまだ温かい。
「どうしてあの時、私を殺してくれなかったの……?」
指を口元へ滑らせると、血で指が赤く濡れる。
進藤は目を閉じていて、この口もとの血さえなければ、ただ眠っているだけのようにも見える。
「ねぇ、どうして……っ」
握り締めた拳で叩き、額を押し付けた胸も、まだ温かい。
「どうして殺してくれなかったの……! 私も……私も、父様たちと一緒に死にたかった! こんなところに来たくなかった! 一人になんてなりたくなかった……!」
嫌だ。
嫌だ。
一人は、嫌だ。
痛いのも。苦しいのも。色んな男に抱かれるのも。人間として扱われないのも。
本当は、ずっとずっと嫌だった。
「どうして……どうして、殺してくれなかったの……」
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