朱の記憶 《R18》

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「……もう一人は嫌……。嫌だ……」  突き刺さったままのナイフを両手で掴む。  力を込め、進藤の胸からそれを引き抜いた。  刹那吹き出す血が、私の視界を、私の顔を、私の身体全部を真っ赤に染め上げる。  赤。赤。朱――。  その時、視界の端を白色が過った。  そちらを見ると、窓の外でちらちらと雪が降っていた。雨はいつの間にか止み、雪へと変わっていた。  窓を開けると、小さな白い粒が部屋へと舞い込んでくる。 「綺麗……」  真っ暗の中、無垢な白が、はらはらと舞い落ちる。赤く濡れた手の平にも、白い雪がはらりはらり。  夜闇に浮かび舞う雪は、まるで白い花のよう。 「……ああ、そうか。進藤様は、最初から気付いていたのですね」  いや、気付いて、じゃなくて、わかっていてここに来ていたのか。  私が自分達が殺した夫婦の娘だと、最初から。  たまたまその娘が売られた店に来て、たまたまその娘を気に入る。そして、通い続け、身請けまでしようとする。  そんな偶然、ある訳などなかったのだ。
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