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「お兄様!」
ペルーラは振り向いて、アルフを確認すると飛び起きてアルフの首に抱き着いた。
声をあげて泣いた。
アルフは小さな身体を両腕でしっかりと抱きしめて、柔らかな髪の頭のてっぺんにそっとくちづけた。
アルフには他にも血縁はあったが、真に家族としての繋がりを感じるのはこの娘だけ。
温かい。
ひとしきり泣いて少し落ち着いてきたところで、侍女に菓子とお茶をもってこさせた。
それを少しずつ口にしながら、ペルーラはペンダントを海に落としてしまった経緯と、誰も拾いに海に入ってくれなかったことの不満を語った。
「それは仕方ないのだよ」
ベッドの脇に持ってきた椅子に掛けていたが、ペルーラの方に身を乗り出し、ベッドに手をついた。
アザレアをそのまま幼くしたようなペルーラの顔をうっとりと見詰めてしまう。
先の大公がアザレアを見初めたのも無理はない。
こんなに幼くあどけないのに、美しい。
将来はどんな美女に育つのだろうか…。
赤毛に生まれなくて良かった…。
もし赤毛だったら…、大公の娘とは認めてもらえず、アルフは乳飲み子を抱えてお城から出ていただろう。
今のように大きな商いもできず、宿に集まるあの子達のように薄くみすぼらしい服しか着せてやれなかったはずだ。
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