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だめだ、やっぱりどうにも体がついてこない。そうだ、今日は調子が悪いのだ、お昼に食べたサンドイッチがちょっと酸っぱかった気がする。きっとそのせいだ、早くお家に帰らないと、具合が悪くなってへたばってしまうかもしれない。
(急いで食べ終えて早く帰ろう……)
急ぐときに限ってハンバーガーがやたらに熱い、こんなに食べ辛いハンバーガーが他にあっただろうか、いやいや、こんなに急いでハンバーガーを食べようとしたことがなかっただけだ。それとも、やっぱりサンドイッチのせいで食あたりを起こしているせいなんだ。
はふはふ言いながら、どうにかこうにかあつあつバーガーを食べ終えて、ゴミ箱へパパッと捨てると、サッサッサッと店を出る。
店を出る直前に、もう一度振り返って彼を見る。彼も私を見ている。まるで映画のワンシーンの様……一瞬の静寂とともに時が止まったかと思うと、今度はゆっくりと動き出す。スローモーションで彼が私に微笑みかける。そして……頭を下げた。
「ありがとうございましたぁ」
映画のワンシーンと言うより、マックでよく見かける風景だった。
「ふう」と、ため息をつき自動ドアを抜けると、いきなり黒い影が前に立ち塞がった。何だと思って顔をあげると、背の高い金髪の男がこちらを見つめていた。
(なんだ、この人……だめだ、金髪はNGだ、足もすらっと長くて、黒い服が嫌味なほど似合っている。モテ男過ぎてキモい。一番ダメなタイプだ)
「お嬢さん、ちょっとよろしいでしょうか」
モテ男が向こうから話しかけてきた。大概こういう時は悪いことが起こる前兆だ。さらりと切り抜けるに限る。
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