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「――でね、どう思う? 付き合い始めたとたんに、彼は髪を伸ばし始めて、茶色に染めて……黒髪短髪じゃないと駄目なんだから! ね、そう思うでしょ?」
伊馬は眉間にシワを寄せて、アゴをつきだいている。変顔しても、整った顔立ちはイケメンだ。
(あきれられてる? まぁ、どうでもいい。どうでもいい男にどう思われようが、どうでもいい)
「聞いてるの? ほら、ビールおかわり!」
「はいはい、よく飲むね……もうジョッキ五杯目だよ……」
「なによ、悪い? お願いされたから来てあげたんでしょう? 話しを聞きたいというから話してあげているんでしょう? 飲んでというから飲んでるんじゃない!」
「いや、飲んでとは言っていない……いや、なんでもない。ところで、その男には結局ふられちゃったの?」
「そんな訳ないでしょう? だって、私はアサミよ! アサミ! 誰だと思ってんのよぉ、コッチからふってやったのよ、茶髪の男なんかには用はないってね!」
「そう……それにしても外見重視なんだね、人間って中身が大事なんじゃない?」
「中身は外見に出るっていうじゃない? それに、見てもわからない内面なんか、ちょっと付き合ったぐらいでもわからないわよ。だから、無駄。無駄なの」
「確かに、言われて見るとそうかもしれないなぁ」
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