好きになれない 【1】

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[0]  フリースクール「つぼみ」  今年で創立十年目のK県認可の有償フリースクールです。どうぞお気軽に見学にお越しください。  先輩に渡されたパンフレットを片手に、日和智咲は寂れたアーケード商店街を自転車を押して歩いていた。  日和の地元の商店街もシャッター街と紙一重のうら寂しいところであったけれど、それに近いものがある。駅から徒歩五分。立地としてはそこまで悪くはないのだろうが、客足は駅の反対側で展開している商業ビルへと流れているようだ。  シャッターが下りている店もちらほらと目に付く上に、開いている店舗も客の出入りはなくひっそりとしている。  耳に付くのは、自分が押す自転車の車輪が回る音ばかりだ。なんでこんなことになったかなぁ。わだかまりを呑み込み切れないまま、日和は深々と溜息を吐き出した。    ――日和くんさぁ、相変わらず何のボランティア活動にも登録していないって本当? もう三年生でしょ。だったら、今年がボランティアのできる最後のチャンスじゃない。教職を目指しているなら、経験しておいた方が有利だと思うんだ。と言うわけで、どうかな、ここ。  ことの発端は、二週間前。三年生に進級する直前の三月末に頂戴した、鶴の一声だった。鶴、もとい、塩見に笑顔でパンフレットを押し付けられて、日和は困惑した。所属している高松ゼミ一番の美女と名高い、一学年上の先輩である。
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