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柴田 和弥 の脳内
既に俺は、末期を越えたステージに立っている。
会話中の『好き』という単語に異常な程反応してしまうのは勿論だ。
動揺を隠そうとすればするほど、
どんどん挙動不審になる。
自分の身体なのにコントロールは簡単に失われて、
容易く想いは空回る。
例えば、とある話題にて奴が
「あー俺も好きだわぁ」
とか、言うとする。
すると、ただ単に他愛もない話の内容について、同意しただけというのに、奴の唇が『好き』と奏でる…その唇の動きがスローモーションのようにゆっくり動いて見え、少しヤンチャっぽくて俺には悩ましげにも聞こえるその声が…俺の耳にねっとりと絡み付く。
そして俺の肌の表面を一瞬にピリリとした刺激が駆け上がり、動悸が早まるのだ。
「お、俺も…」
最大限に冷静を装い、
ごく自然に会話に乗るように捻り出すが、
脳内では愛の告白を叫び散らしている俺がいる。
好きだっっっ…みっ、ミツル!!
その平たい胸に頬擦りさせてくれ!!
「ブッ…だはははは!そんな恥ずかしがりながら言うなよな!どんだけ好きなんだよ…耳掃除!」
爽やかに笑いまくるミツル。
教室中の奴等の『またかー』という一同の深い溜息が聞こえた気がした。
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