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柴田 和弥 の絶望
ミツルは体育の授業には戻ってこなかった。
授業が終わって教室に帰ると、鞄も無く…
「おい、大倉はどうした」
先生に聞かれても…ただ…
「わかりません」
しか言えない。
卑怯だ。
まるで、この場に残っている俺は加害者かのような気分だ。
「しばたぁ~もしかして保健室で何かあったんじゃねー?さっき目が少し腫れてたしぃ~~~」
鋭い外野が疑惑の目で俺を見るが。
「もぉしかしてぇ襲っちゃったとか!?」
「…してねぇよ」
夢でしかな!
それなのに逆をされるとは正に夢にも思ってなかった。
本当の事を話す訳にもいかないだろう。
知らぬ存ぜぬを突き通す他無い。
…だが…
授業中も隣の空席が気になる。
忘れようにも忘れられない…さっきのさっきで忘れられる訳が無い。
さっきの…キス。
キスの間、懸命に考えていた。
俺はどうしてミツルにキスされているんだろう…とか…
どうしてミツルは俺になんてキスをするんだろう…とか…
理由を探っていた。
唇の柔らかさだの、何気に抱きしめられていた腕の力強さだの…
それはそれで十分パニックの要素になっていたのだが、
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