柴田 和弥 の絶望

2/3
前へ
/65ページ
次へ
 俺の気持ちの大半は『何故、どうして』が驚くべき速さで繰り返されていたのだ。    しかしあらゆる可能性を考えてみても導き出された答えは一つ。  『ただのいたずら』  …もしかしたら俺の気持ちにずっと気付いていたのかもしれない。  俺はずっとからかわれていたんだ…  ミツルは何気ないフリをして…俺の反応を楽しんでか?  知らなかったとしても、俺の反応を楽しむためのいたずらだろう。  どちらにしても絶望だった。  お前なんかどうでもいいと言われたような気がして、腹が立った。  そして、隠していたつもりだった欲望を見透かされたかと思うと、  恥ずかしくて情けなくなった。  保健室を飛び出た時は涙が出たのに  もう  泣けもしない。  ああ…俺が馬鹿だったんだ…と…乾いてそう思うだけ。  家に帰っても気持ちはどうにもならなくて…  食事は喉を通らなかった。  部屋でテレビを見ていたが…見ていなかった。  もう寝ようと、歯を磨いて…  鏡に写った自分と目が合う。  情けない顔は昔からだが、目の前のそいつは最低な顔をしていた。  鼻から溜息が漏れる。  口をゆすいでフェイスタオルで口元を拭う。  …と…自分の唇に今日おこった出来事を不意に思い出して手が止まる。  タオルを置いて指で触れてみる。     
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加