柴田 和弥 の恋

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「ふふふ、大丈夫ならいいよ。俺は大倉 光。よろしくな?」 『よろしくな』の最後の『な?』は、 完全に少女漫画の王子様のキメ顔だった。 ページの半分くらいのでかいコマ割りで、 花と輝きを纏った王子がヒロインをオトすために優しく微笑むシーンだ。  それは世紀の一瞬。  俺の中で革命が起きた。  男だとわかってはいるのに…  十分わかってはいるのに…  勿論わかってはいるん…だけど!   少女漫画のヒロインよろしく、俺はいとも簡単に問答無用でノックアウトされた。 思わず体が軽く仰け反った俺。 鼻血を垂らしながら(自分では全く気付いていなかった) 俺はその微笑みを見ただけで恋に落ちた。 「柴田…和弥」 高鳴りすぎる胸を押さえて何とか自分の名前を述べる。   「…ブッ!…アンタ…ククッ…は、鼻血出てるよ」 「え、あ…」 「だははははは!!いやごめん!鼻血なんて小学校以来見てな…いやわりい…ぷ…」  え!酷!  こういう時は笑わないのが優しさだろうが!  おい、全然我慢できでないぞ! 完全に目元笑ってるの見えてるからなー!!  いや、しかし今はそれどころじゃないか。 この鼻血をどうにかせねば!!  と、あわあわと焦りまくる俺。     
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