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大きな雉が空を舞っていました。
「あの雉……食べたら美味しいかしら?」
おばあさんは涎を垂らしながら雉を眺め、「いけない!洗濯にいかなきゃ」と名残惜しいが、たくさんの洗濯物を持って川へ行きました。
おばあさんが洗濯をしようとしゃがみこんだ時、川上の方から、大きな桃が……
────描かれた軽トラがやって来ました。
パッパーッ!
「ばあさん!そんなとこ座りこんでどないしたんな?」
軽トラに乗った男が窓から少し身を乗りだし、おばあさんに声をかけました。
「んなもん、見だらわかんだろ?洗濯しちゅー」
おばあさんは洗濯物を川につけたまま、身体を少し反転させ、ビジネス老人語で答えました。
「はぁっ!?そんなもんあっかいな!
ばあさん知らんのか?ここいらの水質は汚れてきとるで、川で洗濯したら余計汚れてまうど!
ワシが近くの鬼ヶ島に連れてっちゃろ!」
「ひ!ひえぇぇっ!鬼ヶ島!?
いくらこのババが美人じゃ言うても、人拐いは…………
……いやまてよ?このまま私が鬼ヶ島に連れて行かれてババの貞操の危ないところにじいさまが勇敢に助けに来たら……フヘヘ」
男は親切心から、おばあさんを鬼ヶ島に連れて行こうとしましたが、おばあさんは怯えてしまったと思ったら何やら妄想しだしました。
「何ぶつぶつ言うとんじゃ、鬼ヶ島っちゅーたら近くのコインランドリー、はよ言うたら洗濯場の事やがな!」
「洗濯場?……なんじゃつまらん(ボソッ)」
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