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そんなこんなのやりとりをし、鬼ヶ島への行き帰りの車中でおばあさんは更なる妄想を悶々とし、洗濯物だけでなく自身の肌までもツヤツヤにして家へ帰ってきました。
そしておばあさんが家で夕飯の支度をしていると───。
どんぶらこっこ
どんぶらこっこ……こっこーっ!
がっしゃーーーんっ!!
「ほぎゃあーーっ!?」
怪しい音を立てながら、大きな桃が転がってきて、玄関をぶち破り、おばあさんはとても驚きました。
「あちゃー!すいません!怪我ありませんかー?」
おばあさんが包丁を持ったまま、腰を抜かしていると、軽い口調の一人の旅人が壊れた戸口から中を覗いてきました。
「バカタレ!ケガがなくとも戸がなくなったわ!!」
おばあさんは旅人に包丁と罵声を投げつけました。
「あー、そうみたいっすね。
ってかおばあさん興奮しすぎ。包丁が飛んできましたよ、はい!」
旅人はおばあさんに飛んできた包丁を手渡しました。
そして桃の隣に並ぶよう、数歩下がってニッコリ微笑んで……
「おばあさん、このデッカイ桃みたいなやつね、実は桃じゃなくて、"若返りの実"なのよ!
これあげるから玄関の修理費の代わりにしてくんない?」
と、自分の身体ほどある桃をぺしぺし叩きながら交渉しだしました。
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