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「アホかー!そっだらもんで玄関の代わりになるもんか!
修理費がないならお前さんが直さんかい!」
旅人の提案を聞いたおばあさんは当然、激怒しました。
おばあさんの血管が切れそうだけども旅人も妥協しません。
「いやいやいや!そんなん言うたら勿体ないで、婆さん!
これは正真正銘の"若返りの実"やねんぞ?」
「そんな上手い話があるもん……か」
おばあさんは、包丁を手にしたまま、今にも頭から蒸気が出そうなほど真っ赤な顔をし、血圧が心配されそうな勢いで激怒しておりましたが、デカ桃に近付いた時に感じたデカ桃のとてつもなくムラムラする甘ぁい香りにほんの少し、血圧が下がりました。
「まあ、ええから一寸食べてみいな!」
旅人は、おばあさんの林檎のような真っ赤な顔が少し白く黄桃のような色になったのを目敏く確認し、顔をニヤつかせながら、デカ桃をぺしぺしと叩きながら言いました。
「そ、そんなに言うなら食うたってもええけど、玄関の代わりにはせんぞ?」
おばあさんは納得がいきませんが、とてつもない充満な甘い香りの誘惑に負け、半信半疑のままおそるおそるデカ桃に両手をつき、目を臥せ、ゆっくりと半開きにしたカサカサな唇を近付けていきます。
「はぁ。……これが若くて別嬪さんなら、ムラムラするくらい絵面が綺麗なのに。」
それを見ていた旅人はボソリッと不満を漏らしました。
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