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たとえて言うなら私はかすみ草だ。小さくて存在感がなくて、華やかなお花たちに添えてもらうことで、やっと外に連れ出してもらえる。
大学のサークルでも、いつも隅っこで行平さんを見つめていた。そっと見つめていた。それだけで嬉しくて、そこにいられたの。
行平さんはいつもふわっと笑っている、みんなの王子様。私には高嶺の花。
でも、気づくと時々話しかけに来てくれる。ぽつんと座っている私の横にすっと自然に座って、今日は何か楽しいことがあった? なんて聞いてくれた。
そのうちにまた女の子たちが迎えに来てしまうけど、困った時に助けてくれるヒーローみたいだったな。
今夜の喫茶店のことを思い出す。静かな場所だから声を潜めて話した。だから自然に顔が近付いて、いつもより距離が縮まるから、どきっとしたの。折角だから、少しでも瞳の中を見られるようになりたいと願って勇気を出して顔を上げてみた。
すきです。伝えられない言葉を目で送ってみても届かないことはわかっていて、それでも心の声を開放してみたくなる。
一人暮らしの部屋に戻って、花を活ける。透明なガラスのシンプルな花瓶に、そっと水切りした花を一輪ずつ差し入れていく。お互いに会話するように、今夜のできごとを思い出しながら。
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