第1章

4/8
前へ
/54ページ
次へ
ジュリアンは本の中の「核」を手に取った。すると、途端に核は黒いもやを纏う。 「良い願いばかりを叶えるものにはならなかったから、悪い奴に利用されたら終わりだけどね。それはあの人の力の限界だったのかな」 もやはジュリアンの隣に流れ出し、人形を象っていく。彼女は、思わず口を押さえた。そこに現れたのは、紛れもないあの人だ。  そのもやに触れようとした。しかし、手はすり抜けて空を切るだけだ。 「ジル」 そう呼びかけられて、ハッとした。そこにいるあの人は、確かに半透明だけれど――確かに、存在していた。 空を切った拳を握りしめる。彼女は、その拳を見つめたまま言った。 「ジュリアン。私とも契約してください。彼を――魔王様を、蘇らせたいの」
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加