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「――そして、真ん中が藤寺 楓」
と、友人が紹介してきた男が、俺には見えなかった。
「………………」
長い長い黙考のあと、俺は溜息をついた。普段から慣れきっているはずの危機的状況。だというのに、こんな時にかぎっていい対処法が思い浮かばない。
必要なスキルは、心眼だったかコミュニケーション能力だったか愛嬌だったか。
知識を求めて読みふけったのは多少いかがわしい専門書だったものの、こんなことならちゃんとメモしておくんだった。
混乱してきた。知恵熱でくらくらする。このまま保健室に駆け込めば、誰にも起こされることのない快適な睡眠にありつけることだろう。
が、こんな日にかぎって日曜だったりする。まるで長期連休の日本列島に台風が直撃するかのような間の悪さ。
くどいようだが俺は混乱している。だから整理してみることにした。
俺の友人である鳥遍野 礼は、俗にいわゆる霊媒体質だ。あちらからもこちらからも迷える魂を引き寄せてくるらしい。
対してこいつの親友だと自負している俺は、この十五年間、一度もモテたためしはない。女にも幽霊にも。
「――男にも?」
「そう男にも――って、うわ!?」
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