第1章

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この頃、私はある仕事に就いていた。 その仕事は物事を論理的、合理的に判断し対処するといった非常に厄介なもので私はその冷然さに頭を悩ませ、神経衰弱になっていたのだ。 そんな状態でふらふらと橋を歩いているとうっかり足を滑らせ川に落ちた。 幸い、全身を強く打っただけで命に別状はなかったのだがお蔭で三ヶ月の入院と一週間の自宅療養を余儀なくされた。 そしてこれはその頃の自宅療養中の話である。 その頃の私は論理や合理性というものがほとほと嫌になっていた。 人間は感情の奴隷である… 人間が行動を起こす理由には必ず感情が宿る。 しかし、その感情というのは非常に非合理的で理解不能なもので決して論理で説明できるものではない。 そう、感情の証明は不可能なのだ… だが、運の悪いことに私の仕事は物事を合理的かつ論理的に説明することである。 私はその感情のロジックと職務の乖離に困り果てていた。 証明出来ないものを無理矢理、論理に当てはめ仕事を行う自分が馬鹿らしく、何が正しくて何が間違っているのか分からなくなっていた。
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