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藍原さんは簡単に言うとドジっ子である。
運動神経が悪く失敗が多い。
それが可愛いと思う人もいるが、逆に人に癇に障る人もいる。
僕のクラスの場合、後者が大半だ。
そのせいか、彼女はクラスでいじめを受けている。
彼女の机に落書きがされているのを何度か見ている。
彼女自身限界だったのだろう。
しかし、
「飛び降り自殺はダメだよ。しかも歩道橋からなんて。こんなところで飛び降りたら車が通行できなくなってたくさんの人に迷惑かかるから。」
「だったらどういう死に方だったら良いの?」
「…まず自殺する前提で話進めるのやめようか。」
ダメだ。
自殺を止めようと「他人に迷惑がかかる」と言ったが、効果がなかったようだ。
これは何を言っても意味がなさそうだ。
どうしたものか。
「…藍原さんはクラスの皆のこと恨んでる?」
僕は突然にそんな質問を彼女にした。
特に理由はない。
ただ聞いてみたかった。
「ううん、恨んでないよ。私がドジなせいだから。」
彼女はそう言った。
「ただ…皆と仲良くなりたい。皆と普通におしゃべりして、一緒に遊んで、思い出を作りたい。」
…正直驚いた。
「恨んでいる。」そう言われると思った。
僕は彼女がいじめられてるのを見て見ぬふりをしていた。
だからきっと、僕のことも、クラスの皆のことも恨んでいると思った。
しかし、彼女は恨んでいないと言った。
しかも仲良くなりたいと言った。
僕は胸が締め付けられた。
「…思い出を作ろう。」
「えっ?」
「僕は君がいじめられてるのを知ってて知らないふりをしてた。怖かったんだ。でも、もう見ないふりは止めだ。君が皆と仲良くなりたいと言うなら、僕は協力する。」
彼女は驚いていた。
「でも、どうやって?」
「僕に考えがある。任せといて。」
上手く行くかは分からない。
けど、やらないわけにはいかない。
それが僕が彼女に出来る唯一の謝罪だ。
きっと成功させる。
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