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私は想像も出来なくなって口にする言葉も見付からなくなって、自分を持て余しただ思い付いたことを言った。簡単な質問。
「───それは、あんたが悪いの?」
「……」
疑問だった。だって何かそれって違うと思う。確かにお姉ちゃんは死のうとしたけれど。その責任をどこまで負うつもりなのか。無理に決まってる。
自我を持つ一人の人間の責任なんて、結局は誰にも負えないんだ。たとえ、それが一国の主でも。大統領とかそんな人の上に立つ人間であってもだ。
それを。それをこんな小さな人間に背負える訳ないじゃない。私は吐き捨ててしまった。余りに下らなく思えて。
「莫っ迦じゃないの? あんたのお姉ちゃんが望んだんじゃない。選んだんじゃない? その駄目な男に尽くすのも借金したのも自殺図ったのも。みんなみんな、お姉ちゃんが決めたんでしょーが」
「……」
「それをあんたがどうこう負い目被るなんて傲慢よ。そう言うのはね、自意識過剰って言うのよ」
「───」
男は唇を噛んだ。どうだって良かった。何か拍子抜け。何か、とどのつまりはよく在る話ってヤツだった、訳だ。つまらない。
別に非現実を望んでいたんじゃないけど、もっと特別に何か有っても良かったのにね。ああ、眠い。私は欠伸をして伸びをした。そして男に背を向ける。
「……じゃ、そー言うことで。まぁ私から言えるのは、“下らない”ってこと。ただ付け足すなら、
────お姉ちゃんも、あんたに殺人犯になられると寝覚め悪いだろうから、洗い浚い吐いちゃいなさいね」
あの禿げた刑事さんと般若の刑事さんにね。私はそう告げてお姉ちゃんとやらの病室を出た。
どれだけ経ったか時計を忘れたからわからなかったけど、まだ空が明るくなり切ってないから夜中かなと思う。さぁ帰って寝るべ寝るべー、と、私は自転車を漕いだ。
【To be continued.】
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