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早い話。あれから数日が経っちゃった。敢えてオチを付けるなら、私がぐっすり寝てしまい寝過ごしたくらいか。……や、それでも間に合わせたけどね。バイト。
まぁ、さっぱり言ってしまうと、あれから刑事が来ることは無かった。あの二人も、当然他の刑事も。当たり前だけどね。それは。
だから私は今日までの数日をのんびり平和に過ごしたって訳だ。誰の邪魔も入らずに。
本屋の仕事は結構ハード。接客だけじゃない。力仕事も在る。給料はこの界隈じゃ良いほうだけれど。妥当、とは思えないんだよねぇ。
「いらっしゃいませー」
自動ドアが来客を知らせる。正直来るなと思うがそうも言えない。事務も終わってないし早売りを期待する莫迦だったらどうしよう。昼まで待てやぁって話よね。
などと軽く思考しながら予約伝票にチェックを入れながらカウンターで段ボールを片していると。
「……おい」
聞き間違いだろうか。悪い夢かな。白い昼の夢かしら。……なんてね。
「何だ。無事じゃない。殺人犯にはならなかった訳だ、“自称『人殺し』くん”」
私は自分でも意識して悪党面をでっち上げる。視線を上げたその先には、鋭い目線と刃物と紛う目付きと仏頂面。やや機嫌悪さげ?
「……何時に終わる」
「は? 私?」
「以外に誰がいるんだ」
「やーね。デート?」
「……」
黙り込む、直立不動の男。私は舌打ちをあからさまにして。
「冗談よ。そうね、あと二、三時間待てる?」
今は正午。今日は早番の子に頭を滅茶苦茶下げられ面倒だったが断るのはもっと面倒臭かったので代わってあげたのだ。なので、三時で終わりだ。男はこくり、と頷いた。
「じゃあ迎えに来る」
「は? いーよ。どっか行っててよ。そうだなぁ。───この裏手に喫茶店在るんだけどさ、そこにいてよ。三時間後に」
「……わかった」
何かまだ言いたそうな男だが特に反論もせず、去って行った。私も、作業に戻る。が。
「……彼氏?」
ウザいヤツからお声が掛かった。店長の縹だ。コイツは何を勘違いしてるのか、自分が格好良いと思ってるナルシストだ。実際、本人の想像には劣っても、現物も悪い訳ではないのだ。
顔も身長も平均よりは上だろう。痩身で、ここまでなら確かにモテるかもしれない。しかし。
「何すか店長。そんな甘い雰囲気がどこに在りました」
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