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女性の方が、メロンサイダーの上のさくらんぼを人差し指で触った。
「食べろよ…」
思わず声が出てしまった彼に、上司の方が一瞬睨みつけて一口でさくらんぼを食べた。
タネをどうしようかと彼女は少し迷うと、すぐに近くにあったナフキンで口を押さえた。
きっとタネを出したんだろうと思い、私は思わずため息をついた。
上品な行動か、妖艶な雰囲気のせいか、部下の男は少し顔を赤らめた。
おお?好きなのか?
じゃあ今、好きな人に怒られているのか…かわいそうだな。
「もう、あんなミスをしないために、どうすればわかっているの?」
「…ほうれんそう?」
「その通り」
彼はため息をし、彼女から目をそらした。
「自分勝手にプロジェクトを決めて、勝手にいろんな決断をして!
どうしてそんなことばっかりするの!?」
「それは…」
さっきよりも顔が赤くなった彼に、上司はさらに追い討ちをかけた。
「こんな状況が続くなら…どこかの地方に飛ばされるかもしれないわ。
それでもいいの?」
「よくないです!!」
急に大きな声を出してしまったことを恥じて、彼はまた目をそらす。
「僕は…僕は…」
だんだん小さくなる声に、彼女は呆れてため息をつき、野口英世の紙を置いて立ち上がった。
大してメロンソーダを飲んでいないのに、出て行くのか…
「もう、邪魔をしないでちょうだい」
「え、ちょっと待ってください!!」
腕を掴んだ彼を、彼女は一瞬で振り払った。
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