迷子のタッくん

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大学生活にもシェアハウスの生活にも慣れてきた宇宙(そら)は、週に数日できるバイトを探していた。 「お。ラッキー」 この日、二限続きの講義が休講となった。フリーとなったこの時間にバイト探しをしようと宇宙はさっさと大学を後にした。 いつもは大学内のショップでバイトの求人雑誌を立ち読みする。けれども今日は大学近辺の散策も兼ねて、たまたま見つけたスーパーの二階にあった本屋に入ってみた。 ぺらりとめくった求人雑誌に気に入った情報はなく、書店内に目を向ける。 『エブリスタで話題沸騰! 5分もかからず笑えるお笑い短編集』 宇宙も知っている「5分もかからず」シリーズの新作だ。堂々のタッくん特集。これを見つけて手にしてしまったのが運のツキだった。 ―――クックックッ…… 笑いが止まらない。 ―――天丼が…カツ丼が…早すぎてウケる…… 書店内という静かな時空からギャグの時空へと飛ばされてしまった宇宙は、声が出せずにただ肩を震わせていた。(参照:『海の家「ミライ」』) 笑いの涙が本に垂れないよう気をつけながらページをめくると、次はワンダーランドへと突き落とされた。(参照:『不思議な鏡の国の物語』) ―――ぷ。アリス…じいちゃん… 宇宙はどっぷりとタッくん迷作劇場(ワールド)にはまっていった。 次から次へと押し寄せる笑いの波に身を任せ、翻弄されるままに次の物語へとコマを進めた。
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