迷子のタッくん

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ブルルッ…… ―――なんだよ、ムーカイ。物語の大盛況な所なのに。 ポケットで震えたスマホを取り出すと、スクリーンにはインド人シェアメイトからのメッセージがあった。 ―――今夜のメニューは、エビ天と豚カツと、どっちが良いかだと? そんなの決まってる! 満面ニマニマしながら宇宙はスマホを眺めた。 ―――チェシャネコのスマホケース欲しいなあ。読者プレゼントとかないのかな。 どこかに応募券でもついていないかと本のカバーを外して、表も裏もなぞるようにまんべんなく見回す。 「いらっしゃいませ。そちらの短編集はただ今刊行記念のスペシャルプライスとなっております」 「はっ……」 『じじい』という名札をつけた書店員とガッチリ視線が合った。ソフトな語りの割には鋭い眼光。店長に違いない。 数分後…… 『丸谷書店』のカバーをつけてもらった本を見つめ、宇宙は「イイ買い物をした」と一人満足げに頷く。そして「バイトしなきゃ」と改めて心に誓った。 宇宙はムーカイから頼まれた買い物をするために、建物の一階にあるスーパーへと軽やかに階段を降りていった。
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