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幸いこのスーパーはそれほど大きくはない。すぐにママらしき若奥様が食肉のコーナーの方にいるのが目に入った。
「タッくん。ママあそこに……あれ?」
宇宙の横にいたはずのタッくんが消えていた。だがすぐに、スーパーの自動ドアの前でしゃがんでいるタッくんを発見した。
―――瞬間移動か? けどなんで?
三歳児の行動は時によく分からない。目を離してはいけない。
スーパーの自動ドアの前で、タッくんはトマトを一つ拾っていた。どうして自動ドアの前にトマトが転がっていたのだろうか。
―――運命と戦うトマト……死の淵からの転生……まさか……?
タッくんが勢いよく立ち上がった。その手に収まったトマトは、なぜか絶望に打ちひしがれているように見える。
そのトマトを連れて、タッくんは走って戻ってきた。
「タッくん、そのトマト……」
タッくんは、透明人間の前を通り過ぎるかのように宇宙の前を通りすぎた。知らないお兄ちゃんとしゃべってはいけない。ママからきつく言われていたことを思い出したのかもしれない。
宇宙の「おい」というつぶやきなど耳に入っていないだろう。ま、迷子のタッくんが無事にママのところに戻ったならそれで良いと宇宙は目を細めた。
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