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ドロン
って、忍者かッ?!
そんな突っ込みを心の中でしながら
古新聞の記事を読む私。
もう色褪せてボロボロのソレには、
10年前の父の写真が掲載されており。
幼い頃に別れてから私の中の父の記憶は、
この写真の姿で止まっているのだ。
>川に溺れていた少女を救助!
>感謝状を贈られた黒木拓郎さん。
まったく。
自分の娘は助けないのに、
他人の娘を助けるだなんて。
命懸けでギャグ人生を送ってるんだな、
あのヒモ親父。
ああ、もう、なんだか眠い。
一晩中タンバたんに可愛がられたせいで、
殆ど寝てないから。
10分間だけ寝ちゃおうかな。
よいしょっ。
運び出し易いようにと
玄関前はダンボールの山となっており。
その奥に横たわって私は目を閉じる。
…それはさながら、
毒リンゴを食べた白雪姫みたいに。
うとうと、うととと。
こんにちは、睡魔さん。
しばらく仲良くしましょうよ。
それはいいね!萌々香ちゃん。
ってハイ、もう一人芝居はヤメますね。
ゆらり。
気のせいだろうか。
閉じたマブタに浮かぶ影が見えた。
そう言えば鍵を開けたままだったな。
恐る恐るマブタを開けると、
影の正体らしき人物が
じっと至近距離で私を見ていた。
そしてその人はこう言うのだ。
「萌々香!お父さんだよ~。
話があるから起きてくれ」
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