20.[番外編 リ、リアリィ?~really?~]まあいい姫

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もう肌寒い季節だというのに、 半袖Tシャツとハーフパンツ。 金鎖のネックレスは明らかに偽物で、 日サロで焼きましたと言わんばかりに 真っ黒な肌と怖いくらいに白い歯。 長らく会っていなかったその人は、 恐ろしいほど老けており。 年齢のワリに、 いわゆるアゲアゲなテンションで 見ていて辛くなるほどに。 「んー、さすが俺の娘だよなあ。 超カワイイじゃん。 あのさあ、そこで頼みがあるんだ。 チョコッとだけ、 俺の紹介で働いてくれないかな。 いや、そんな怪しい店じゃないぞ。 接客業なんだけど送迎もあるしな」 …いやいや、『接客業』で『送迎』って。 どこをどう考えても怪しい店だし。 ていうかさ、前回の借金を返した私に 御礼の一言も無いワケ? それって人間として終わってない?? 無の境地に入り、沈黙を貫き通す私に ヒモ親父は尚も説得を続ける。 「『ウン』って言ってくれよお。 このままじゃ俺、東京湾に沈められるッ。 なあ、どんなダメ男だろうと、 お前と血の繋がった父親じゃないか。 死んだら夢見が悪いだろ?!」 ダメだ。 この男は私をカモとしか思っていなくて。 絶対に今回で終わるワケが無い。 そして死ぬまで集られるんだ。 猫なで声が急にドスの効いた声になり、 ヒモ親父は私を脅し始める。
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