20.[番外編 リ、リアリィ?~really?~]まあいい姫

7/20
前へ
/20ページ
次へ
「知ってるんだぞ。 お前の会社は副業禁止なのに、 キャバクラでバイトしてたってこと。 俺が会社に電話を掛ければ、 クビになるかもしれないな。 それが嫌なら俺の言う通りにしろ!!」 …呆れて返事が出来なかった。 だってそのバイトはアナタが作った 借金を返済するためにしたもので、 好きでやっていたワケじゃないからだ。 ヒモ親父は巧みに硬軟を使い分ける。 「萌々香、今まで黙っていたけどな、 俺はずっと養育費を送金していたんだ。 自分の食事を切り詰め、貯めたお金をさ。 だから大学まで行けたのは俺のお陰だ。 ここで少しくらい親孝行したって 罰は当たらないだろう?」 正直、少しだけ揺らいでいた。 こんなに広い世の中で、 肉親と呼べるのはこの男だけで。 その人が私に助けを乞うているのだ。 しかも、養育費をずっと送金していたと。 なんだかんだ言って、 私は愛されていたのかもしれない。 いや、愛されていると信じたかった。 「なあ萌々香、『ウン』と言ってくれ。 働いてみたらきっと楽しい店だぞ」 …と、そのとき。 バーーーーーーーーーン!! ガタッ!! 豪快に玄関ドアが開き、 その勢いで蝶番のネジが吹っ飛び、 ドア自体も外側へと倒れる。 「萌々香!待たせたなッ!!」 そこには、寒いのに上半身裸で、 背中の入れ墨を強調しながら笑う タンバたんが立っていた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加