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「……お前んちって、ここから近いのか?」
不意に話しかけられて心臓が跳ねる。
その声の主を見上げると思いの外近くに立って私を見下ろす、いやその失礼臭い視線は見下すだな、と思いながら睨み返す。
答える義理はないが、早くどっかに行って欲しくてあしらう様に答える。
「川の向こう」
「へえ、俺そこの堤防降りてすぐ」
後ろの堤防を指差す彼。
そんな事はどうでも良いから。
「珍しいな、こんな所で会うなんて。散歩か?」
「……」
ウザい。
早くどっかに行ってよ。
でもその願いは届かなかったらしい。
私の隣に座り込む彼。
その足元に大人しく座る黒のラブラドールレトリーバー。
それが無垢な目で私を見上げていた。
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