プロローグ 「悲劇」

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───21XX年 東京 某所 ──ピピッ──ピピッ 「──メス」 「はい」 薄暗い部屋の中、機械音と医療器具の金属音だけが静かに鳴り続ける。部屋の中には白衣を着た6人の医師らしき人達。メスを握る40代前後の医師が、他の5人の医師達に指示を送る。 「・・・慎重に行うんだよ?僕らの夢の作品の最後の被験体なのだからね?」 「分かっていますよ、先生」 6人の医師達が取り囲んでいるのは手術台に仰向けで乗せられている白髪の少年。身長、顔の幼さから考えて、推定8歳位の歳の子だろうか。 「脈拍は?」 「安定しています。予定通りですね、鬼堂先生」 測定器を見ながら助手は答える。鬼堂という男はその言葉を聞いて目が笑う。 「よし・・・皮膚を縫合するぞ。最終段階に入る」 「了解」 鬼堂はそう言うと、切開された少年の胸部を糸で縫合していく。5人の医師達は鬼堂の動きを片時も目を離さず見入っていた。 ──パチッ 縫合開始から5分後。 「・・・ふぅ・・・縫合完了だ」 「お疲れ様です、先生」 鬼堂が縫合した糸の根元を切り、縫合は完了した。切開された少年の胸部は綺麗に目立たなくなっていた。
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