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「ところで朔間、君はどうして───」
「・・・・・・雪雄」
「・・・え?」
「朔間じゃなくて・・・雪雄って呼んでください。せっかく知り合いになれたんですから、これから仲良くしたいです。僕も、鳴神君ではなく景君って呼びたいです。いいですか?」
雪雄は少々顔を赤らめながら俯きげに話す。今の雪雄の姿は、男という事実を知らなければ内気な女の子が気になっている男の子に頑張って距離を近づけようとしている健気な姿と見られてもおかしくない。
「あ、あぁ・・・構わないよ。じゃあ、雪雄?」
「やった・・・!ありがとう景君」
2人の間は和やかと言うか穏やかと言うか、そんなムードで包まれている。これまた雪雄が男という事実を知らなければ、仲の良い付き合いたての美男美女が楽しそうに会話している姿と見られても何らおかしくはない。
「景君、そういえば僕に何か聞こうとしてなかった?」
「・・・あっ」
雪雄の何気ない一言に、景はハッとして本来の目的を思い出す。
「あぁ、悪い。大した話ではないんだが、雪雄はどうしてUDOに───」
景が雪雄2度目の質問をしようとした、その時・・・
『───あー、あー。間もなくUDO104期生、入隊式を行います。構内にいる新入隊員の皆様は、速やかに受付を済ませ、席へとお座り下さい。繰り返します───』
絶妙なタイミングで入隊式開始のアナウンスが鳴り響き、景の質問はそのアナウンスによって悉くかき消された。
「・・・・・・」
「ふふっ、入隊式が終わった後でもゆっくり話しましょうか」
「・・・・・・そうだな」
雪雄の微笑みと優しさに、何だか少し救われた気がした景であった。
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