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『あー、間もなく入隊式を開始いたします。構内の新入隊員は速やかに席へとお座りください。繰り返します───』
入隊式の開始のアナウンスが再度講堂内に響き渡る。それと同時に、他の新入隊員たちが続々と席へと着き始め、隊員達の話し声で騒がしかった講堂内が自然と静かになり始める。
景や雪雄も、周りに倣って口を閉じ、入隊式の開始を待った。
雪雄は相変わらず、身体の落ち着きは取れないままである。
──────────
『───お待たせしました。ただいまより、UDO第104期入隊式を開始致します』
しばらくすると開始のアナウンスが響き、講堂内に厳かな曲が流れる。
いよいよ始まる入隊式に、景も雪雄も無意識に肩に力が入る。
『入隊式の司会は、私UDOB級隊員の綴カンナ(ツヅリ カンナ)が務めさせていただきます』
前方の壇上隅に、紫色の長髪に銀のメガネをかけたスタイルの良い女性がマイクを持って立つ。
綴の登場に新入隊員たちは拍手で迎えると同時に、男性の新入隊員達の「おぉ・・・!」という野太い歓声が会場内を包む。
「あの司会の人、綺麗だよな」
「あぁ、顔立ちも良いし・・・胸もデカいし・・・!」
「やべぇ・・・一瞬で惚れる」
「あの人の為なら奴隷になっても良い」
「というか、あの人の下僕になりたいっ」
景の耳に聞こえてきたのは、綴に対する男達の憧れと劣情と、一部の人間による歪んだ性癖だった。
「はぁ・・・。どいつもこいつも・・・」
「あははっ、周りの男の子達はみんな欲望に素直ですね・・・」
景も雪雄も、周りの男達には呆れ返っている様子。
自制心の欠片も感じさせない彼らのことは、景の目にはただただ煩悩にまみれた哀れなケダモノにしか見えなかった。
『素敵な歓声ありがとうございました。では気を取り直して、まず始めにUDO局長である仙石吉宗による開会宣言です』
綴の紹介により、壇上にある職員・役員席に座っていた細身の体型をし、軽いウェーブをかけた黒髪が特徴的な中年の男性が立ち上がる。
仙谷が壇上中央に歩き出した途端、さっきまでの男達の汚れた歓声は消え、皆真剣な顔つきとなった。
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