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「───チッ」
「ん・・・?」
突然、景の後方から舌打ちの様な音が聞こえた。それに反応した景は、即座に後ろを振り返る。
振り返った先には、壁の柱にもたれながら腕組みをしている男の姿があった。
男の目線の先には、女性隊員達に囲まれている一宮がいる。
その一宮のことを、男はじっと睨みつけている。
「・・・・・・?」
「誰・・・ですかね?私服の様なので、僕らと同じ新入隊員だと思いますけど」
男はじっと一宮を睨み続けている。怒りの様な、恨みの様な負の感情を込めた視線をただ黙って一宮に送っているようだ。
「・・・・・・ふん、気に入らねぇ」
男はしばらく睨みつけた後、荷物を背負って足早にその場を去って行った。
「何なんでしょう。えらく一宮隊長のことを嫌っている様子でしたけど・・・何かあったんでしょうかね?」
「さぁな・・・でも、何か因縁めいたものは感じたけどな」
「因縁・・・ですか?僕は一宮隊長に対する一方的な嫉妬の様に感じましたけど・・・」
「そう見ることもできる。だけど・・・」
景は男の去って行く様子を目で追いながら答える。
さっきの男から景が因縁みたいなものを感じた理由ははっきりとはしていなかった。
視線の感じ、彼から伝わった空気感からなんとなくではあるが今の自分と重なる部分があると感じ取ったからである。
「・・・まぁいいか。どうせアイツは俺らと同じ新入隊員なんだ。明日にでもなれば会うことはできる。真相はそのうち分かってくるだろ」
「確かにそうですね!」
景は頭の中でごちゃごちゃ考えることはやめた。
今色んなことを考えても仕方が無い、雪雄もそれはわかっていた。
「よし、ここも人が多くなってきたし一旦外に出るか?少しここを散歩しよう」
「そうですね、行きましょうか」
景は雪雄と共に、UDO内を出て外庭広場へと向かうことにした。
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