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「・・・『不死者東京大侵攻』か・・・俺も、その時に雪雄と似たような経験をしているんだよな」
「え・・・!景君も?」
雪雄はぎょっとした顔をして景の方を見る。
「俺の父親がさ、昔UDOの隊員だったんだ。でも、その侵攻戦の時に戦死してさ・・・カッコよくて、優しい父親だったよ。東京と大勢の人達を守って死んだんだ・・・俺の誇りさ」
「景君・・・・・・」
景は青空を目を向けながら笑ってみせる。
しかし、口では笑みを見せていても、青空を見るその目は決して笑ってはいなかった。
(景君はお父さんを亡くして悲しいはずなのに・・・辛いはずなのに・・・どうして笑うことができるんだろう・・・)
雪雄には、景の持つ心の強さが理解できなかった。
それと同時に、自分にはない強さを持っている景が羨ましいとも思った。
「この刀もさ、父親の形見なんだ。父親が唯一俺に遺してくれた形あるもの。いつも、肌身離さず持っているんだよ」
「あっ、その刀が・・・」
「そうだ、マサムネっていうんだ」
景は腰に差した白刀「マサムネ」を指さす。刃も、柄も、鍔も、全てが純白の刀であるマサムネは、思わず見とれてしまうほどの美しさである。
「お父さんの形見、すごく大切にしてるんですね。きっと、お父さんも喜んでいますよ!」
「ははっ、ありがとうな雪雄」
景は雪雄の顔を見てニカッと笑う。景の笑顔を見た雪雄も、自然と笑顔になった。
「ところで、景君はどうしてUDOに入ろうと思ったんです?やっぱり、お父さんの後ろを追いかけようと思ったんですか?」
「あー・・・そうだなぁ」
景は雪雄の返答に困った。
景がUDOに入った目的は、自らをこんな体にした元凶である鬼堂嘉彦を探し出し、闇の実験の真相を知ることだ。
でも、それを雪雄にそのまま伝えてしまえば自分があの「血の悪魔事件」の被験者であり、「悪の遺産」の一人であることを露呈してしまう。
(───・・・どうしたものか)
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