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「・・・・・・」
天羽は景に退屈だった分の人生をここで取り返してほしいと思っている。
普通の生活を送ることが出来なかった分、景にはここで思い切り羽を伸ばし、自らの目的を果たしてほしいと考えているようだ。
景のことを思い、これから先のことを楽しみに感じている天羽。
しかし、それとは対照的に一抹の不安を感じざるを得ない一宮がいる。
「・・・だが、わかっているのか迅。鳴神はただの人間じゃない。あいつは鬼堂の実験によって生まれた不死者なんだ」
「・・・・・・うん」
「話を聞くと、あいつの体に移植されたのは “ブラッド・エッジ” だ。ただの不死者じゃない・・・相当危険な能力を手にしているのは間違いないんだ」
「・・・・・・そうだね」
眉間にシワを寄せて、段々と神妙な表情へと変わる天羽。
見た目はただの青年である景だが、危惧しなければならない部分も存在している。
「鳴神に楽しい思いをさせるのは勝手だが、最悪な事態のことも想定してくれよ?もしあいつの血質が突然暴走し、“ブラッド・エッジ” の制御が効かなくなったりでもしたら───」
「───その時は、僕が責任持って始末するさ・・・確実にね」
天羽の一言で、一宮の言葉はかき消される。
その言葉の重さに、一宮は話す言葉を失った。
「まぁ・・・大丈夫だよ将貴。君がそこまで心配する必要はない。鳴神君は、“ブラッド・エッジ” に潰されるような人じゃないからね」
「お前のその自信はどこから出てくるんだ・・・」
「どこからって・・・本能かな」
「・・・・・・ふっ」
一宮は、天羽の予想外の返答に思わず吹き出した。
「はははっ!本能か!ふふっ・・・本能ね、お前がそこまで言うからには俺もその本能に懸けてみるとするよ」
「ふふ、ありがとう」
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