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男の子の獣の様な唸り声が部屋全体に鳴り響く。
それと共に、男の子の背中から4本の赤い触手の様なものが皮膚を突き破って現れた。
赤い触手はまるで1本1本が生き物の様に単独で動いている。男の子の体は血まみれで、右目が赤く染まっていた。
「す、すごい・・・!素晴らしい!!」
「先生!!もうダメです!!血質が暴走しています!!このままでは!!」
「素晴らしい!!素晴らしいぞ!!!実験は大成功だ!!!!」
鬼堂は暴走した男の子を前に一層の興味を示し、マスクを外して目を輝かせている。予想だにしなかった不足の事態であっても、鬼堂にとってそれは自らの実験の成功を意味する余興でしかないのであった。
鬼堂とは相反する反応を示している5人の医師達は、狂気じみた鬼堂の様子をただただ見つめるしかない。
「鬼堂先生!!逃げますよ!!あなたの身が危ない!!」
「何をするかね!僕の貴重な作品達が・・・!」
「がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
その時だった。
血まみれの”バケモノ”はゆっくりと上体をおこし、鬼堂を見つめる。次の瞬間、背中の赤い4本の触手が一斉に鬼堂目がけて襲いかかった。
「危ない先生!!」
「キャァァァァァァァッ!!!!!」
4本の触手は鬼堂ではなく、鬼堂を庇った助手の体を貫いた。腹と胸、足を貫かれた助手は、体全体から血を吹き出し、死亡したのは一目瞭然だった。
「既に硬質化まで可能なのか・・・!素晴らしい・・・!」
「みんな!先生を担げ!!この場から逃げるぞ!!!」
助手達は唸り声をあげる血まみれのバケモノを目の前にして目を輝かせている鬼堂を担ぎ上げ、総動員でこの場から逃げ出そうとする。
鬼堂は目の前から離れていくバケモノを目つめながら、必死に手を伸ばそうとしている。まるで、大好きなおもちゃを取り上げられてそれを必死に取り返そうとしている幼い子どもの様な悲しげな表情をしていた。
「・・・必ず、必ず迎えに行くからなぁ!僕の・・・僕の大切な、大切な作品達よー!!」
助手達に担ぎ込まれ、鬼堂とその助手達は薄暗い研究室を後にした。
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