第1部 1章 ダイナ

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「ありがとうね」 すりガラスから透ける大きな背中に投げかけた。雅樹くんは返事の代わりにピースサインをくれてそのままダイナのところに戻って行く。 教えてもらった通りに胸下あたりを温めてみると少し気持ちが楽になる。あとから調べて分かったのだがその場所に肝臓があるから温めると二日酔いが落ち着くらしい。 ウコンに頼らなくても良いなんて助かる! タオルが緩くなるまで温めて気持ちスッキリした頭で台所へ向かう。ダイナと遊んだのもあってお腹はぺこぺこだった。 *** 「今晩ですか?」 それは昨日と同じ部屋で雅樹くんを除くみんなで夕食を食べていたときに康晴さんから聞いた海で見られる景色の事。 「そう、地元の人しか知らない場所があってね。夏の満月の日にその場所へ行くと月の光が波に反射して幻想的な風景になるんだよ。時間があるなら案内するから行ってみないかい?」 康晴さんは車の鍵を揺らしながらそう言う。 「やっさん、なんでそれを陽莉ちゃんにしか言わないんですか!俺たちもその景色みたい!」 「そうですよ!そんなに綺麗な景色なら陽莉ちゃんと一緒に見たい!」 なんか一緒に見たいって誘われた気がするけど聞こえなかったことにしておこう。 この2人と一緒に見に行ったら五月蝿そうだし。うん。 「でもなんでその事を私に教えてくれるんですか?まだここにきて2日しか経ってないのに。普通はそうゆうのってリピーターの人とかに教えてあげませんか?」 「陽莉ちゃんは特別!いろいろ疲れてたみたいだから自然と綺麗な景色に触れて、見て、リフレッシュしなさいな」 ねぇ?と顔を合わせながら淳子さんも一緒に勧めてくる。 「でも、帰りはどうすれば…」 送ってくれるのはありがたいけど2人の雰囲気から察するに一緒に見るとは思えない。夕方少し近くを散策したけれど見知らぬ土地だし迷子になったら帰ってこれない自信がある。 「何を言ってんだ?携帯で連絡取ればいいに決まってんだ」 「え。康晴さん携帯持ってたんですか?」 普段お客さんに接しているとき以外は原始人みたいな格好をしてるからなんとなくその姿で文明の機器である携帯を扱ってるようには見えない。失礼だけど。 「ほら、これが番号だ。陽莉ちゃんのも、ほら」
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