If

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船を降りて目の前に広がる世界に息を飲む。 海なんて子供の時にクラゲに刺されて以来、毎年遊びに行こうって誘われても何かと理由をつけて断ってきた。 だからちゃんと見るのは10年ぶりくらい。 だけど、それでも。 「きれい……。」 そんなありきたりな言葉しか出て来なかった。 船を降りて予約していた少しボロいタクシーに荷物を乗せて、1番近くの浜辺まで連れて行ってもらう。 タクシーを降りてキャリーケースを持ってきたのなんて忘れて小さな肩掛け鞄だけを持って砂浜へ向かって走る。 目の前に広がる蒼と雲のコントラスト。 人がほとんどいない砂浜は太陽がまぶしいくらい照りつけていて宝石みたいにキラキラと輝いている。 そこに自分が立っていること忘れてその場に倒れこむ。熱された砂つぶが素肌にあったって暑くて痛いけれどそんなこと全く気にならないくらい目の前の出来事に飲み込まれてる。 大きく息を吸い込んで、そのまま目を閉じた。 波の音が心地よくて今までの疲れがドッと押し寄せてくるかのように眠気が…… そこで意識を手放した。 「ねーえ。ねぇってば!そんなところで寝てると危ないよ?」 耳元で大きな声が聞こえて、びっくりして目を開けると飛び込んできたのは空とは違う碧の瞳。 「キミ、ココの人…じゃないよね。こんなところで無防備に寝てたら危ないよ?」 突然話しかけてきた彼はこの島には似合わない真っ白な腕で力強く体を抱き起こしてくる。 ほわー めっちゃめちゃ綺麗な顔してるなーって… 「え…、だ、誰!?」 日本人とは思えないその瞳の色に見惚れてしまったけれどよく考えたらこの人誰だ!? 私の言葉を無視して彼はその辺に転がしてあったカバンを手に持つとそのまま手を引いて海岸沿いの道を歩く。 「俺、あー…うん。雅樹って呼んでくれればいいから。よろしくね?」 いきなり立ち止まったかと思うと雅樹と名乗った彼は名前だけ告げてまた手を引いて歩き出す。 いつの間にか太陽は少しずつ傾いてぼんやりと茜色に変わり始めていた。
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